あいかわらず藤原正彦を読んでいます。2006年、新書サイズでベストセラーとなった 『 国家の品格 』 をそっちのけに、初期の作品から順番に・・・只今、『 遙かなるケンブリッジ -一数学者のイギリス- 』 を読書中。
氏の、およそわたしたちが思い描く数学者というイメージからはかけ離れた軽妙なその語り口と観察力、そして武士道を尊ぶ熱い想いに、ときに笑ってしまったり、ときに深く共感したり・・・。
毎度のことだが、私は外国に出ると、途端に強烈な愛国者になる。日本にいる時は、日本や日本人の悪口ばかり言っているのに、国外に出るや、一切の批判を許せなくなる。昭和天皇のことをヒロヒトなどと呼ばれるだけで、たとえ相手に軽蔑の気持はなくとも、ひどく苛立ってしまうのである。外国で暮らすということは、日本を常に、そして過剰に意識することである。
『 遙かなるケンブリッジ -一数学者のイギリス- (藤原正彦 著 / 新潮文庫) 』 (第一章 ケンブリッジ到着) より一部抜粋。
『 国家の品格 』 を読んだ人に聞くと、「 同じことを書いてあるよ。 」 とのこと。なにより興味深く感じるのは、初作 『 若き数学者のアメリカ 』 から30年間、氏は同じこと訴えてきたことだ。10年前、20年前に読んでいたなら、「 このおっさんは、えらい右がかってるよなー。 」 と一笑に付された?であろうことが、2006年ベストセラーとなって広く国民に受け入れられたいまの日本の世相や時代背景を鑑みるに、然もありなんと納得するのであーる。