公開初日の 『
グエムル -漢江の怪物- 』 をレイトショーで観てきた。『 殺人の追憶 』 を撮ったポン・ジュノがどんな怪獣映画を撮るのか?という興味と映画公開前からのYahoo!映画の不当?な作品ユーザーレビューを見ると、期待半分不安半分な印象だったが、わたしの映画を観終わった感想は、つっこみどころはあるものの
絶賛の一言に尽きる。
在韓米軍の垂れ流した産業廃棄物(ホルムアルデヒド)が漢江に流れ込み、その数年後突然変異によって誕生したグエムル(怪物)が漢江に姿を現す。冒頭からいきなりつっこみまくり(笑) だが、映画が始まって15分もしないうちに、真っ昼間から堂々と現れたグエムルに惹き付けられる。こそこそとカメラの前を横切ってなかなか姿を現さないどころか、「 あれはなんだ!? 」 と漢江河岸で戯れる人の指さす方を見れば、漢江にかかる大きな橋の裏側にべったりとぶら下がっているグエムル(笑) そいつが漢江にドボン!と落ちたかと思うと河岸のこちら側にやってきて、上陸。狂った闘牛のように次々と人々を襲う。
なんでも、昼間の明るいシーンで逃げまどう群衆とCG を合成するのは難しいとか。VFX は 『 ロード・オブ・ザ・リング 』 などを手がけたWETA WORKSHOP に発注。そのトリッキーな動きといい、ウイルスを寄生するホストという設定で、パニックを巻き起こす。漢江一帯は軍により封鎖され、グエムルと接触した者は保菌者として病院に隔離され、俄然緊迫感は高まる。
しかし、この映画、ウイルス感染のさらなる拡大を防ぐことに終始するものの、肝心のグエムル退治に軍はまったくといっていいほど出てこない。『 エイリアン2 』 のようなミサイルや火炎放射器を使って怪物と戦うシーンを期待すると肩すかしを食らうだろう。なんせ、この怪物と戦うのは、娘をグエムルにさらわれた漢江河岸で売店を経営する主人公たちアホアホ一家なのである。
強烈なグエムルの突進と同様に、細かいつっこみどころを有無とは言わせない圧倒的なパワーで物語終盤まで引っ張るが、どーにも合点のいかない点がひとつ。
グエムルと接触した主人公ら家族は、保菌者として軍により病院に隔離されてしまう。それが結果的には、娘を怪物から救い出したいのに障壁となって足止めを食らった格好になる物語中盤。だが、その設定が最後にきて、グエムルがウイルスをもっていないことが判明し、ウイルスによって亡くなったと思われたアメリカ兵士の死のニュースは誤報であったことが伝えられる。おいおい、物語の中盤を占めるその設定を、「誤報でした」の一言で覆すなよー(泣) しかも、ラストで子供と食事中に、テレビからそのニュースが流れるんだが、「お父さん、食事に集中しようね!テレビを消そうよ!」 と子供から諭されるくだりは、まるで監督が 「 大風呂敷広げすぎちゃったけど、この件は忘れてね!てへ♪ 」 と舌を出して謝っているように思えてならなかった。
そーいうものすごいつっこみどころを内包しつつも(その他にもいろいろあるんだが)、日本の平成ガメラシリーズとはまた違った、韓国映画が怪獣映画を撮るとこーなるか!という圧倒的なパワーの前に、個人的には今年のベスト3に入りそうなぐらいの傑作だった。
ちなみに一緒に観た友人によると 「 微妙。」 とのこと。観終わった瞬間に、きれいさっぱりなにも印象に残らない映画が多いなか、良きにも悪きにもなにかを残すので、「ありゃ、ないでー。」 とご飯を食べながら、ひとくさり盛り上がって帰路に就いた。
【追記】 後になって DVD でもう1度観たら、この映画がものすごいメッセージ色の強い映画なんだということがよくわかった。映画館で観た直後、記事に書いたウイルスの件にしても、これは存在しない脅威を 「 ある。ある。 」 と喧伝して、韓国国内に居座り続ける在韓米軍、果てはアメリカを揶揄したものであり、そーやってみると、ラストの子供との食事のシーンも非常に暖かみのある人間味あふれるエンディングだった。(2007-8-16 13:38)