女性監督ミミ・レダーの初監督作品にして、大傑作 『 ピースメーカー 』 をご紹介します。
東西の冷戦ムードも雪解けし、世界は核軍縮へ向かう中、ロシア、ウラルの山中でテロリストにより核弾頭9発が強奪される。軍事衛星でいち早くこの異変をキャッチしたアメリカ合衆国、ペンタゴンは、女性科学者のニコール・キッドマンと国防省特殊情報部大佐ジョージ・クルーニー2人を中心としたチームを作り、9発の核弾頭の行方を追うのだが・・・。
物語中盤、友を殺された恨みとばかりに、執拗にベンツをぶつけるジョージ・クルーニー演じるデヴォー大佐。追ってくる相手のクルマが動けなくなったというのに、わざわざ戻って体当たり。1回、2回、3回。終いにはホイールスピンで漏れたガソリンに引火させて、相手のBMWを爆破する始末。それだけでは飽きたらず、わざわざクルマから降りてきて、すでに死体と化してる相手に拳銃を撃ち、とどめをさす。
この執拗なまでに、ドライな、残酷なまでの、リアルな人物描写。「これが現実で、これが戦場なんだよー!」とニコール・キッドマン演じる女性科学者ジュリアに吠えるジョージ・クルーニー。
女性監督ミミ・レダーしてやったりのカーチェイスシーンです。「女性で、初監督作品で、アクション映画?」と不安視される観客にぶちかますミミ・レダーの執念がそこかしこに見られます。
昨今の、スピーディーで、これでもかこれでもか、と畳み掛けるようなハリウッドアクションからすると少々地味な印象を受けるかもしれませんが、けっしてこの映画、ぬるくない。物語をニューヨークに移しての、テロリストを追っていくラストは、手に汗握る超一級のサスペンスとなっています。
また、この映画は911事件以前に公開された映画ですが、この映画を貫くテーマは、911事件にも通じる、とても深いものとなっています。物語後半部分で、テロリストが語る犯行声明は、まさしくこの映画そのものを表していると言えると思います。
「わたしたちは、モンスターじゃない。おまえたちと同じ赤い血が流れている人間だ。」