最初の2~3ページを読み始めると、ビタっと指が貼り付いたかのようにページを繰る手が止まらないといった具合に読み進める本があるとすれば、こーいう本をいうのだろうか?実に5年ぶりぐらいに・・・作品でいえば 『 龍臥亭事件 』 以来の島田荘司 の小説 『 ロシア幽霊軍艦事件 』 を
読んだ 読んでいる途中(ただいま180ページ)。
島田荘司 の作品は学生の頃に隈無く読んだのですが、『 奇想、天を動かす 』 以降ぐらいから、純粋な本格ミステリーの面白さよりも、やれ日本人気質批判だの恨み辛みが主人公の口を借りて頻繁に語られることに、読者としてうんざりしてしまった。よっぽど島田荘司は、売れない時期に編集者からつらい目にあったか、初期の古い作品はまだしも近年の作品はミステリーそっちのけで延々と語られる持論の数々・・・。学生の頃なら、「 へー、そーなのか。 」 と思うものの今となっては 「 働いていりゃ嫌事の1つや2つも、そりゃあるわな。 」 と鼻白んでしまう。
しかし、この人のはったりとも与太話ともとれるストーリーテラーとしての才能は確かで、物語の面白さにぐいぐいと引き込まれる。
箱根のホテルに飾られていた1枚の古い写真。そこには、芦ノ湖に浮かぶ帝政ロシアの軍艦が写っていた。その軍艦は嵐の夜に突如として現れ、軍人たちが降りると忽然と姿を消してしまったというのだ。山間の湖にどうやって軍艦が姿を現せるというのか。御手洗と石岡は、この不可解な謎に挑むことになり・・・。
冒頭で提示される軍艦の写る1枚の写真は、やがてロシア最後の皇帝ニコライ二世の四女、アナスタシア(ディズニー映画にもなったその人)をめぐる歴史ミステリーという
実在のアナスタシア伝説に挑む話になっていく。まさしく事実は小説よりも奇なり。
この作品の前に読んだ 『 セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴 』 も小品ながら面白かった。