年末最後のACID が
リスナーが選ぶベスト10 なら、年明け最初の放送は、
恒例のACID が選ぶベスト10 なのだ。2006年で、実に14年?を迎える長寿番組となった ACID 映画館。思い返せば、前身の シネマ飯店 と名乗っていた頃から、聞き出して共に大きくなった。以前は、リスナーが選ぶベスト10 に共感する部分が大きかったのだが、それもいまや、「なんでやねん。」と違和感を感じること多し・・・。最近ではパーソナリティの方へと年齢が近づいたのか、年初のACID が選ぶベスト10 の方に共感する作品が多くなった。
平野先生が選ぶ2005年ベスト10&ワーストは・・・
10位
エイリアンVSプレデター・・・思い入れの強い双方の作品に対して、「ちょっとやそっとじゃ満足できないぞ」とどーしてもハードルが高くなってしまう。が、エイリアン好き、プレデター好きが待ち望んでいたものをドンと出されたら握り拳をつくってしまう。次点は、『 香港国際警察 NEW POLICE STORY 』。ハリウッドに進出したジャッキー・チェンのぬるーい作品でない、香港時代の生身のアクションなんだと・・・こちらも待ち望んでいた(以上の)ものに見事応えてくれたというところで評価が上がる。
では、双方の順位の差は?ジャッキーの伝統芸ともいえる間延びした演出がマイナス部分。片や、AVPはエイリアン、プレデターをこよなく愛するオタク監督が作り上げた前作品に対するこだわりもあって第10位。しょーもない映画・・・だがファンにはたまらないこの歓び。
09位
きみに読む物語・・・地味な話、地味なキャスト。ベタな物語、恋愛ものとしては薄っぺらいところがあるかもしれないが、誰もが高校生~大学生ぐらいの時に経験したいろんな想い。楽しい想い、甘酸っぱくて切なくて苦しい想いをしたことをすごくベタではあるがポンポンポンと描かれていくところも理解できるし、いいなーと思った。が、なによりもこの映画が良かったのは、老人になった2人の名優たちのすばらしい演技がグッと映画を引き立てた。主題であるそこに言わずもがな、こみあげてくる感情をぶつけようとした勢いはすごかった。ジェームズ・ガーナーが口を押さえて堪えきれない涙を、顔を真っ赤にして相手を見つめるというシーンはたまらなかった。
08位
最後の恋のはじめ方・・・ニューヨークの大半の男女は余っているという強引な決め打ちであったり、どこで採ったかわからないリサーチの結果を見せられて入り込める世界が楽しかった。特にこの映画のウィル・スミスは輝いていた!恋の達人である自分が他人の恋を成就させる面白さもありながら、自らが恋にはまってしまったときにすべての効力を失ってしまうという・・・これは都会を舞台にしたファンタジーなんだなと。100人いたら、100通りの恋があるという恋愛の法則・・・HOW TO なんて当て嵌まらないんだということを言っていた。それだけにとどまらず、男同士の友情も描けていたというところで、なんと楽しい映画を観たんだろうという気持ちよさ!なぜ、この映画がもっと評価されないのか!いまあらためて観たらスカみたいな映画かもしれないが、この映画を観たときの身震いだけは忘れられないということで、第8位。
07位
私の頭の中の消しゴム・・・やっぱり忘れられない1本。2005年を考えたときに、「記憶障害」というものがテーマにあった。9位の 『 きみに読む物語 』 もそう。『 50回目のファーストキス 』 も事故による記憶障害。そして、この映画もアルツハイマーをテーマにしている。2006年に控える邦画 『 博士の愛した数式 』 というものもそう。
ある一定の時間でリセットされてしまう・・・人生でリセットしたいことはいっぱいあるが、リセットしてしまったら一体どーなるんだろう?病気とか障害というものをテーマにしようと言うのではなく、テレビゲームのリセットボタンを押す感覚で、「あー!もう全部やり直し!」と思ってしまう思考になりがちな、そんな中で生まれてきたジャンルだと思われる。そんな風に思うかもしれないが、本当にリセットしてしまったら、こんな哀しいつらいこともあるんだよ、と提示してくれた映画。
ソン・イェジンの可愛らしさたるや!本当に素晴らしい!『 4月の雪 』 でのペ・ヨンジュンの相手役というのは、この消しゴムに結びつくための前振りだったのではないか?という気もする。
リセットする、リセットしないみたいな発想が儚く消えてゆく恋愛、愛にうまく重なったパターン。『 ある愛の詩 』 という映画が一時代を築いたのであれば、2000年代はこーいうテーマなんだなと感じた。
06位
Ray・・・素晴らしかった。レイ・チャールズ、彼自身の人生に釘付けになった。楽曲が生まれてきた背景には、こんな喧嘩があった、こんな愛憎劇があったということをうまく描いていく。つまり、この映画はミュージカル仕立てになっていたと解釈。音楽というものも自分の人生の延長線上の中から生まれてくるものなんだという観点だからこそ、その歌にまつわるドラマはこれだけあるんだということを変に説教臭く見せるわけでもなく、オムニバスのように見せるわけでもなく、一連の流れとして見せていくこのうまさは秀逸!Ray (ジェイミー・フォックス)の演技も素晴らしかったが、なによりもこの映画の構成力が素晴らしかった。
05位
エターナル・サンシャイン・・・これもテーマは記憶。脳の中のメカニズムが近年、徐々にではあるが解明されてきた。そんな中で生まれてきたアイディアだとは思う。アカデミー脚本賞を取ったが、これは取って当たり前だなと納得。1年をざっと振り返った時に、なんの脚本が良かったか、なんのアイディアが1番良かったかなーと考えると、エターナル・サンシャインに行き着いてしまう。ACIDが放送では紹介しなかった、推すリスナーの多かった『 バタフライ・エフェクト 』 も素晴らしい作品ではあったが、1年を振り返ってどれを選ぼうかと考えた際に、どーしてもこの作品に負けてしまった。
04位
ナショナル・トレジャー(未見)・・・このざるみたいな映画。でも、ざるが故に面白い!ハリウッド映画として面白い!わたしが投票するのであれば、アカデミー脚本賞はこの 『 ナショナル・トレジャー 』 に差し上げたい!この脚本は最高!
調子のいい映画、都合のいい映画という声もあるが、映画というのは都合よくても気持ちよく騙してくれたらだとか、調子よくても気持ちよく観させてくれたらという・・・そんなハラハラドキドキするテンポの中に放りこまれたら、そんなものはなにも関係なくなる。現実がどーだろうと都合のいいことがどーだろうとなーんにも関係なくなるというこの映画の楽しさ!
謎解きというものに対して、2人の男が一歩一歩、歩を進めていく。志しは似てどもアプローチの方法が異なるニコラス・ケイジとショーン・ビーンが徐々に男同士のライバル心に変わっていくというところが面白かった。
騙されたと思って観ると本当に黙された映画かもしれないけれど、映画を前にポテトチップスやみかんをおいて、楽しむにはぴったりの映画。エンターテイメントとしては2005年のナンバー1といっても過言でない・・・ちょっと言い過ぎかな?
03位
海を飛ぶ夢・・・これはベスト3に入れたかった。ミリオンダラー・ベイビーとともに「尊厳死」をテーマにした映画だったが、こちらの方が深みがあった。2005年という年を振り返った際に、「 絶対にこれ! 」 という映画がそんなになかった1年だった。( STAR WARS EPISODE III は対象外。別格。殿堂入り扱い。ベストジーニスト大賞が毎年いっしょと同様みたいなもの )洋画で言うと、『 海を飛ぶ夢 』 がベスト1だった。
02位
サマータイムマシンブルース(未見)・・・観た瞬間、絶対ベスト1の勢いのある映画だった。『 海を飛ぶ夢 』 が2005年で1番深い映画だとすれば、2005年で1番面白い映画がこの作品。交わされる会話、コント、劇の面白さはそれぞれ好みがあるが、のめり込んでいくドライブ感はすごかった。ヨーロッパ企画の原作の舞台のテイストがそのまま映画になっていた。それを本広監督が縦横無尽な映像で立体的に魅せようとした、それが素晴らしく結実している。舞台の面白さをどう360度から捉えて撮影したら面白いか?という風に組み立てられた、素晴らしいコラボレーションだった・・・1位のこの映画を観るまでは。
01位
ALWAYS 三丁目の夕日(未見)・・・悔しい!お前はホンマに年をとってんな、と言われることを覚悟して選ばせていただいた第1位。
三丁目の夕日は反則やわ。1番、心震わされたのはやっぱりこの映画だった。世の中の映画ベスト10で山のように評価されるであろう、このままいくと国民的映画になりそうな気がしていて、「えー!ぬるっー!」って言われるのも覚悟しながらも、やっぱり心を震わされたのはこの映画だった。音楽を聴いただけで、タイトルを聞いただけで心が温かくなるようなこの作品。
ワースト
デンジャラス・ビューティー2(未見)・・・心情的には 『 戦国自衛隊1549 』、これは怒りの頂点だった。それでも拾い集めてみるとまだいいところもあったと考えたい。『 鉄人28号 』、なんじゃこれ!?と思っても拾い集めるところがあるかなっと。拾い集めるところが0!が、『 デンジャラス・ビューティー2 』 だった。1が良かっただけに、期待したものがなにもなかったという意味でもワースト!
むっちゃんが選ぶ2005年ベスト3&ワーストは・・・
03位
お父さんのバックドロップ(未見)・・・毎年、ブラッド・ピットとか個人的思いのある映画を入れてくるむっちゃんとしては、自分の名前がエンドタイトルで上がってくるという最初で最後の記念として入れておかないといけない映画。ベタやけどもいい映画。
02位
スカーレットレター(未見)・・・イ・ウンジュの遺作。作品としても素晴らしかった。知ってか知らずか、画面の中で魅せるイ・ウンジュの女優としての輝きが素晴らしかった。遺作と思って観るからそう見えるのかもしれないし、人が、女優が突如として輝きを増す一瞬であったと思う。
01位
ALWAYS 三丁目の夕日(未見)・・・2005年1番泣いた映画。「泣ける映画」が流行っている昨今、泣ける映画を 「 泣ける 」 と推していいものかどーか悩んだ。「泣ける映画」とか「今年1番泣けた映画」という言葉すら陳腐な表現ではあるけれども、いい涙で、暖かい涙だった。人間は、いろいろな感情で涙が出るんだなーと思った。
ワースト
クローサー(未見)・・・「 時間を返してくれー! 」 と叫びたかったクローサー。俺とお前とどっちが兄貴やねん?どっちが先にやった、やれへん、テーマはそこ!名優揃えて、もったい付けて結局それかい!観ている最中から、登場人物から気持ちがどんどん離れていって、映画に入り込める訳がなかった。
伊藤D が選ぶ2005年ベスト3&ワーストは・・・
03位
フェーンチャン ~ぼくの恋人(未見)・・・タイ映画。少女役の女の子がとっても可愛かった。6人の友達で共同監督をしていながら、作品がほんわかまとまっていた。シネマグランプリから洩れているものを中心に選出。
02位
オペラ座の怪人(未見)・・・きれい、美しい、音楽がいい、映画はこーいう風に金をかけて欲しい。予算を預かっている立場として、金の使い道にはうるさい伊藤D。金をかけるんやったら、こーいう風にかけろ!とラジオ祭りの装飾もオペラ座の怪人を見習え!と言うてたとは平野先生談。『 海を飛ぶ夢 』、『 きみに読む物語 』 と迷ったが、この作品が第2位。
01位
マラソン(未見)・・・今年も韓国映画の秀作は多かった。『 私の頭の中の消しゴム 』 と迷ったが、ことしはベスト3に入れる韓国映画は1つだけにしておこうと言うことでこれ。
ワースト
チーム★アメリカ/ワールドポリス・・・まったく笑えない。ミニチュアが泣いている。
総括
障害や病気を扱った映画でありながら、生のエネルギーに満ち溢れていたのが2005年の傾向だった。『 三丁目の夕日 』 が魅せる、「明日に・・・」「前向きに・・・」という生のエネルギーだったり、『 海を飛ぶ夢 』 にしろ、死をテーマにしながら「生きる」ということに向き合おうとした主人公であったり・・・そーいうテイストが2005年に印象に残った。それと反対のエネルギーが世間にあるから、余計に際だったのかもしれない。そーいう方向に感動の類が変わってきているし、そーいうものに惹かれている。
注:この記事は、2005年1月8日の
アシッド映画館( ABC 1008kHz ) の放送内容を要約して書き起こしたものです。