2020年代のアメリカでは、パージ法なる法律が制定された。パージ=浄化。1年に1度、19時から翌朝7時までの12時間、殺人を含むあらゆる罪が合法化されるという法律。ただし、武器として爆弾とか毒ガスとかは駄目っぽい。4等級以下の武器(普通に、銃とかナイフ)の携行は認めている。パージ法のおかげで、失業率は低下、日常の暴力も低下した(ぉぃ
パージ法の触れ込みとしては、日頃の鬱屈したストレスを己の獣の本性を目覚めさせる事で浄化しよう!とテレビで放送している。結構おバカな設定かと思いきや、パージに参加しようとするのは貧困層が大部分なのだ。金持ち連中は、その日を避けるように海外に行くだろうし、19時が来るとお屋敷の窓に強固なバリケードのシャッターを下ろして、完全なセキュリティの下で、家の中でぬくぬくとワインを飲みながら、食卓を囲み、静かな夜を過ごしている。隠れる場所のない貧困層だけが、街中に繰り出し、殺しあっている。
パージ法の差す浄化とは、社会的にお荷物な貧困層を殺しあわせる事で、政府の財政負担を減らそうという社会的浄化を促す法律なのだ。日本でも1億総中流と言われたのは遥か昔、いまでは貧困層や上級国民?なんて言葉まで聞かれる程、二極化が進んでいる。アメリカは、もっと昔から国民の間に存在した二極化による鬱積が、この映画にパージという形で表れているんだと思うと、決しておバカな設定とも思えない。
しかし、この映画が残念なのはこれだけ設定が面白いのに、映画が始まってみれば、単なる強盗が主人公一家に押し入ってくるパニックルームものにしかなっていない事だ。俯瞰的視点でパージ法の矛盾を追求するような映画になっていない事は甚だ惜しいなと感じた。ただ、これの続編 『 パージ:アナーキー 』は、この設定を活かした期待通りの傑作になっているみたいなので、楽しみだ。
余談だが、パージの夜が明けて、最後にテレビがアメリカ全国のパージの状況を各地の天気予報のように伝える。そのなかで「 来年のパージまで、あと364日あります。今日からパージについて議論しましょう。」とアナウンスされる。だんじり祭りが終わった瞬間から、来年の祭りの事を議論する岸和田市民のようで、不謹慎ながら、怖いけど少しわくわくする自分がいる。
55点。