いまや恐ろしいもので、あのデビット・フィンチャー監督 『 ファイトクラブ 』 がAmazonで2,090円(税込)で買えてしまうのだから、恐れいる。しかし、これらのDVD作品は以前に比べて本当に安くなったものです。
かたやハリウッドで何百、何十億と制作費をかけた大作が、公開から数ヶ月後には、2~3,000円かそこらで売ってるんですから、CCCDをかけた日本の音楽CDが売れなくなるのもわかるような気がします。相手にするマーケットが違うという声もあるでしょうが、日本の音楽シーンもアジアの国々に行けば、日本のCDショップの洋楽と同じような扱いで、大挙として棚に並べらているのをみます。もっともコピー品が濫造されているのは事実ですが・・・。
デビット・フィンチャーはわたしの好きな監督でもあります。彼は、たしかコカ・コーラのCMだかMTVの音楽クリップだかを撮っていた監督なだけに、映像の撮り方がスタイリッシュであり、観ていて非常に気持ちいい。また、その映像に加えて、本作は非常にメッセージ色の濃い内容の作品となっている。
おそらく、この 『 ファイトクラブ 』 がデビット・フィンチャー監督の現時点での最高傑作であろう。
公開当時、劇場で1回観てるだけに、今回、わたしもDVDを買って観ましたが、最後のオチがわかっているだけに、
文字通り、普通に観れます。オチをわかっているだけにオチがわかったような目線で、何の齟齬もなく
普通に観れてしまうデビット・フィンチャーの手腕。劇場で最初に観たときには、見事に騙されました。
あらためて、DVDを観て思ったのは、前半部分でこんなにもサブリミナル的な描写があったっけ?ということです。それが伏線としてよく効いているのですが、オチを知っているだけにあからさま感ありありで、わかりやすくなったような気がするのは気のせいかな?
この映画の肝と言える1番印象に残っているシーンは、中盤、ブラッド・ピットとエドワード・ノートンがコンビニ雑貨店に強盗に入るシーンです。レジの学生を裏手に連れだし、銃を突きつけるブラッド・ピット。
「お前は学校でなにを勉強している?生物学?なぜ獣医をあきらめた?なぜ志さない?数週間後に獣医への勉強をしていなかったら、お前を殺す。」
と言って学生を解放する。「なぜ、あんなことをした!?」と食ってかかるエドワード・ノートンだが、ブラッド・ピットは「あいつは、明日の朝目覚めると、今までにはないぐらいにうまい朝飯を食うだろう。」と話す。
この映画は、公開当時より尚一層、現代にマッチし、現代社会に強烈なパンチを食らわせる映画になったと思う。日々、大量に消費されるモノ・金・性 そして、時間。そんな時間の中で生きているのか死んでいるのか、何のために働き、何を目的に生きているのか、わからなくなっている現代人にいまいちど生きることの意味を突きつける。
殴り合うことでの生きる実感を感じる2人を見て、公開当時、アメリカも病んでるなぁーと思ったものだが、何のことはない現代の日本も病的という意味では大差ないように思われる。