子供の頃、近所の空き地に移動図書館が月に1回来ていた。移動図書館というのは、小さめのバスの運転席から後ろのスペースに、本棚を並べて図書館にしたようなクルマ。貸し出しカードさえ作れば、無料で本が貸し出せ、次回来たときに返却するシステムだったようにおぼえている。
子供心に、移動図書館のいいところは、学校が薦めるお決まりの児童図書だけでなく一部の漫画も取り揃えていたことだった。そんな中に、小山ゆう 『 がんばれ元気 』があった。早速1~3巻を借りて家に持ち帰って読んでみた。
当時、2階建てのベットの下で、西日が差しこむ夕暮れ、布団の中で読み終えて号泣。漫画で泣いたのは、これがはじめてだった。泣き疲れて眠ってしまって、起きたときには借りた『 がんばれ元気 』の裏表紙が体の下敷きになって、折れてしまったことに深い罪悪感を感じて、返却する際にたいそうばつの悪い思いをしたことを思い出す。
ロートルボクサーの元気の父ちゃん、「シャーク堀口」は、期待の新人の「関拳児」にかませ犬同然の扱いで、リング上でなぶり殺しにされてしまう。試合後の控え室で、元気が関拳児に食ってかかるシーン・・・・・・子供心にも自分のことのように感情移入して読みふけった。その後も移動図書館で借りてきて、よく元気の真似をして通過する電車内の客の顔を判別できるか?と目を鍛えたもんです(笑)
その後、移動図書館に寄りつかなくなって、たしか元気が東洋チャンピオンだかで、外国人ボクサーと戦う前の恐怖を描いた巻まで読んだのが記憶の最後でした。
最近、コンビニに入るとペーパーバックのように分厚い、この手の漫画の復刻版を見かけるようになりました。おそらく、過去に出版された3巻分ぐらいを1巻にまとめて再販したもののようですが、『 がんばれ元気 』もあったので手にとって立ち読みを決め込む。
不思議なことにはじめて読んでから20年以上が経っているのに、全く色あせていないことに驚いた。それよりも子供時代に気付かなかった、元気を取り巻く芦川先生や三島栄司(三島さんって「やらないか?ウホッ」の人に似ていますね~。)などの他のキャラクターのドラマに惹きつけられた。子供のころから世界チャンピオンに向かって駆け上っていく元気の成長と、元気を取り巻く人間ドラマは、まさしく「がんばれ元気サーガ」なのだ。
それに、なにに心を鷲掴みされるかというと、『 がんばれ元気 』に限らず、小山ゆうの描く登場人物の泣き顔だったりする。とくに、ひょうたんを横にひっくり返したような歪まんばかりに壊れたような口。泣いているようでいて、怒っているようでいて、殺意すら感じるあの口が、「泣き」の悲しい場面に、それだけではない「なにか」を訴えてるようで物語に引き込まれる。どーかすると、小山ゆうの筆がすべったのかと思わせるぐらいに歪んだその顔は、悪ふざけが過ぎるぐらいに嫌悪感をおぼえさせるものもある。
amazonさん、My First WIDE シリーズの1、6、9 巻を早く再販してください~。