仕事が終わって帰宅すると、携帯に母から着信があった。「 ちょっと家に来てー!お父さんになんぼ言うてもあかんねん! 」 と言う。わたしはピン!ときて、とりあえず R10 を持って実家に向かった。
実家に着いて母にはなしを聞くと、30分ぐらい前から父の様子がおかしいのだとか・・・。「 今日は何日やったっけ? 」 から始まって、直近の過去の記憶があやふやな状態なんだとか・・・。とりあえず、父の前に RICOH R10 をセットして動画撮影をスタートさせる。というのは、同じようなことが2~3年前にも1回あったからだ。2~3年前のときも、今日の日付が何度聞いても何度教えてもわからない。3分前に教えた日付を質問すると、何日やったけ?となる。遠い過去は覚えているのに、当時行っていたバイトからその日どーやって帰ってきたかの記憶がなかった。そもそもバイトに行ってたことすら覚えていなかったのだ。
このときばかりは、母と顔を見合わせて青くなった。ところが1時間もすると、記憶が戻ってきたようで、こちらのする質問に対して、怒るようになった。「 そんなん言うてへん。 」 だとか 「 ちょっと頭が白くなることあるやん。 」 だとか・・・。たしかに、あの1時間の父の様子は普通でなかったと母と口を揃えて言うのだが、終いには冗談交じりに 「 俺を病人にしようとしている。 」 とまで言い出しかねない勢い。
そんな訳で電話を受けたときから、R10 で動画撮影することにした。そのときの父の様子はやはりちょっとおかしく、新聞を見ないことには今日が何日かすら思い出せなかった。盆休みに誰が遊びに来たのかもわからなかった。孫とUSJ に行ったことも覚えていなかった。家族構成や父の父や母の名前、過去に飼っていた犬の名前を聞くと 「 バカにすんな。 」 とすらすらと答えた。最初のおかしな言動から40分が過ぎ、1時間が経とうかという時間になると、記憶が戻ってきたのか、こちらの質問に対して 「 なんで、そんな質問をするんだ。 」 といわんばかりにテキパキと答えた。
いままでの1時間がおかしかったと指摘すると 「 母はなんでも大げさに言う。 」 と開き直る始末。早速いま撮った動画をテレビに繋いで見てもらう。「 ワハハハハ。いや、わかってんねんで。わかってんねんけど、急に聞かれたら頭が白くなることあるやん? 」 と笑って見ていたが、感じるところもあったようで、素直に病院に行って診察を受けることに同意した。
こんなことなら、1回目の症状が出たときに病院に連れて行っておくべきだったと後悔する。