原作:貴志祐介 の 『 黒い家 』 が出た当時、その物語の恐ろしさもさることながら、1番驚いたのが、『 黒い家 』 刊行後に起こった、あの和歌山のカレー事件と小説の内容が酷似していた(保険金詐欺や登場人物)ことだった。加えて、作者は執筆する以前、保険会社に勤務していたというから、まるで彼等をモデルにストーリーを書いたのか?と思わせた。
映画 『 黒い家 』 は、大竹しのぶの怪演だけが記憶に残ったが、作品の出来についてはほとんど記憶にない。その 『
黒い家 』 を韓国がリメイクするということで観てみたら、すこぶる出来が良く・・・というか原作に忠実(何分、かなり昔に読んだので、細かな部分は忘れているが)な、一級のホラー作品に仕上がっていた。
保険調査員である主人公は、顧客からの電話で黒い家に呼び出される。その家で、その家の子供の首吊り自殺を発見する。数々の不審点から、主人公は子供の自殺に見せかけた保険金詐欺を疑うが・・・。
なにが怖いって、罪の意識や良心の呵責を一切感じない人間ほど怖いものはない。この映画を観たとき、あの和歌山の事件で、「 撮らないで。撮らないで。 」 と半笑いで報道陣やカメラマンにホースで水をかけていた某の姿を思い出した。映画のなかで言うように、「 この人間には、心がない。 」 のだ・・・。
後半、13金と見紛うばかりの殺人鬼との対決シーンになっていくのはあれだが(原作もこんなだった・・・たしか)、この陰惨なはなしのラストに、わずかな救いとなるシーンがあったのは、ホッとした。主人公の過去のトラウマに纏わるエピソードを最後の最後に回収する。この陰惨なホラー映画が、人間賛歌のメッセージを発するとは!?と思わず膝を打った。おそらく、映画オリジナルのエピソードだと思うが、これは巧いと思った。
『 ノーカントリー 』 のハビエル・バルデムといい、『 ダークナイト 』 のヒース・レジャーといい、今年は悪役が輝いた1年だった。この映画の悪役も相当に怖いが、なにせ和歌山の本物を見ているだけに、前2作の彼等の演技と比べ、見劣りしてしまう。特に女性役の方・・・。
なんでも 『 オールド・ボーイ 』 をスピルバーグがリメイクするとか・・・『 黒い家 』 もハリウッドが飛びつきそうに思うが・・・。