リビングで、宿屋のご主人と並んでお茶を飲みながらテレビを見ていると、ちょうどクイズ番組をやっていた。解答者は、一様に迷彩カラーの軍事服に身を包むまだ年端もいかない若者ばかりだった。
詳しいところは忘れてしまったが、頭脳的なクイズばかりでなく、体当たり的なゲームも含まれていて、日本で言うところの、「 風雲!たけし城 」 とか、いまで言えば 「 SASUKE 」 に似たようなクイズ番組だった。
クイズに勝ち残った幾人かの勝者への賞金は、ほんのつかの間、兵役を無事終えて戻ってくるのを待っている母との再会であったり、恋人とのひとときの時間だった。感情豊かな韓国人のお国柄もあろうが、その再会シーンは、斜にかまえた日本の若者からは想像できないぐらいに、本人たちもそれがテレビ放映されていることを忘れているのか?というぐらいに、なんの飾り気も、格好もつけない素の若者たちと、母親の本来の姿だった。
隣に座っている兵役を果たした宿屋のご主人曰く、「 この番組は、韓国でも非常に人気があります。優勝した彼等の姿はとても共感できるものです。それぐらい2年間?の徴兵期間というのはつらいものなのです。 」 と語った。
その後、そのテレビ番組をきっかけに、宿屋のご主人とすこしの間、韓国の徴兵制度についてお話をした(というか聞いた)。止せばいいのに浅はかな考えから、日本にも徴兵制度があれば云々・・・と切り出すと、
「そんなロマンチックなものではありません。若者の、青春時代の1番いい時期に徴兵制度で2年もの間、兵役に付かなくてはならないのはあまりにも辛すぎる。人間を駄目にします。なにもないことが平和です。」
と、ぴしゃりと静かな口調で語った。