S660 の事を考えるとき、BEAT について語った NAVI TALK の一節を思い出す。北海道鷹栖町の Honda のプルービンググラウンドで公開された S660 プロトタイプの Response の一連の記事を見たとき、やはりそれを思わずにはいられなかった。
徳大寺 ビートの開発陣は、このクルマを作っているあいだ、ほかに見るべき類型のクルマがなかったんだよね。で、なにを見ていたかというと、NSXなんだよね。
館内 スポーツカーを作るというのは、企業にとって冒険だと思うの、小さくても、大きくても。それもミッドシップだったら、もっと大きな冒険だよね。ビートにとってよかったのは、NSXがさきにあったから、開発陣がある意味で肩の力を抜いてクルマづくりにかかれたことだよね。NSXで、さきにミッドシップ・スポーツカーのブレークスルーができていたからこそ、のめりこまずにすんだ。もしのめりこんでいたら・・・・・・。
大川 オタクになっちゃう。
館内 (笑) オタクになっちゃう。こうスッキリしたクルマにはまとまらなかったんじゃないかな。
ービートは小さいことがアドバンテージであるような車型なんですね。
館内 そう。日本の軽自動車は、ついその小ささを作る側が卑下しちゃうんだよね、小さくてすいませんって。だから装備をめいっぱいつけましたと、なんでも四駆のワンボックスのサンルーフ付き、にしちゃう。
ー小さく生まれたのに、そのことを否定するような論理で生きようとしてはダメなんですよね。
徳大寺 そうすると、マルビ(=貧乏)そのものになっちゃう。
館内 精神的なマルビ(=貧乏)ね。そこから発想するから、ステアリングは曲がればいい、シフトレバーは入ればいい、ブレーキは踏んで最後に効けばいい、カックンでもなんでも止まればいい、という車作りになっちゃう。
BEAT オーナーで、S660 の購入を考えている人は、今回の S660 プロトタイプをどう見たのだろう?姿形を見れば、S660 という名前よりも BEAT という名前の方がしっくりくるのになーと思っていたが、舘内端 の言うように、こうスッキリしたクルマにはまとまらなかったんじゃないかな。という点では、S660 と BEAT は決定的に異なっているように思える。
BEAT は、やはりどこか力が抜けているというか自由で、S660 は、NAVI TALK のお三方が危惧した通り、オタクの袋小路に入ったような、あれもこれも・・・というクルマになっていないか?と一抹の不安を憶えるのです。