『 風が強く吹いている 』 の三浦しをん原作。しかも、本屋大賞1位。そして、『 川の底からこんにちは 』 の石井裕也監督。期待が大きすぎたのか、うーん・・・激しくいまいちじゃった。
辞書を作るおはなしなんですが、これが激しく地味。観る前から地味な話だろうなーということは予想していたのです。辞書作りをはじめてすぐに、先輩社員であるオダギリジョーも音を上げるんですね。「 これ、いつまでかかるんですか!? 」 って・・・。主幹である小林薫が言うんですね。 「 15年か、20年か、大辞林だと28年かかったとか・・・。 」 っと。
映画の最初の方での、このオダギリジョーの反応は、映画を観た観客の誰もが共感できるものなんですね。これから15年20年続くかもしれない、この地味な作業に誰もが溜め息をついてうんざりするかと思います。
そこに、この映画の主人公、馬締光也(まじめみつや)が、小林薫の後釜として辞書編集部に入ってくる。この馬締くんというのが変わり者で、他の編集部では使えない社員なのですが、本の虫というか、言葉の虫というか、自宅アパートは一面本の壁、いつもかばんには辞書が入っている、しかし、コミュ障という一見取っ付きにくい人物を松田龍平が演じている訳です。この松田龍平は素晴らしかった。(ついでに、池脇千鶴も素晴らしかった。エンドクレジットを観るまで池脇千鶴が出ている事に気付かなかった。)彼は、人知れずこの辞書作りに闘志を燃やして長い年月取り組んでいく訳です。
ここで、観客は冒頭で 「 えー!?マジかよ? 」 とうんざりしたオダギリジョーから、映画が進むに従って、馬締くんに共感していかなければならないのですが、馬締くんが辞書作りに何の面白さを感じて取り組んでいるのかが、わたしには希薄に思えてならなかった。辞書を作成していくなかで、馬締くんをもってしても、その工程が苦行に思えてならなかった。
馬締くんが、冒頭で小林薫にスカウトされる際、「 『右』 という言葉を説明できるか? 」 と聞かれたとき、「 西を向いた際の北の方。 」 と言った文系の持つセンスというのか言い回しというのか・・・面白い本に出会ったときの、行間に没入して、その世界に入っていくような感覚を、辞書を作成していく工程のなかで、苦行と同時に観客は体験していくのかと思ったら、然にあらず。辞書作成という長い年月同様に、上映時間も長く感じてならなかった。事実、この映画は長い。何度も時計を見てしまった。
馬締くんは大家のおばあさんと猫の、2人+1匹で古びたアパートに住んでいるが(空き家も馬締くんの本置場と化している)、そこに突然、宮崎あおいが現れる。その登場シーンは、ヤシマ作戦直前の碇シンジと綾波レイが月夜の下で会話を交わすシーンを連想させるが、いま考えると宮崎あおいの役名が林香具矢だからですね。
で、ふたを開けてみれば、宮崎あおいは大家のおばあさんの孫娘だという。ええっー!?って驚くと同時に、おおー、なんという理想の設定(笑) しかし、この恋愛エピソードもなんというか付け焼き刃的というか、取って付けたようというか・・・。宮崎あおいは馬締くんというキャラクターに何か化学反応というか変化を与えれたのかな?女性で板前をやることに悩んでいた宮崎あおいは、馬締くんから何かを得たのかな?
55点。