この時期、洗車をすることを躊躇われる。とにかく寒いのだ。指先が冷たいのだ。それでもクルマぐらい洗わないことには新年を迎えられんとばかりに、洗車に勤しんだ。バケツにカーシャンプーを溶かして、スポンジで泡立てる。隈なく BEAT の隅から隅まで泡で包まれる。次はガラコで窓を撥水処理でもしてやろうか?と考える。
そんな風に寒さを忘れて手を動かしていたら、何故か耳なし芳一の話を考えているのだった。平家の怨霊である武士の迎えに、耳だけ般若心経を書き忘れたが為に耳をもがれるあれである。幼少時に聞いた怪談だが、耳をもがれる恐怖もさる事ながら、全身にお経が書かれた芳一の扮装(いでたち)は、大人のいま見ても不気味である。
この 『 耳なし芳一 』 の怪談から、何を読み取ればいいのか?そんな洗車と全く関係ないことを悶々と考えていた。泡立てたスポンジでボディを洗う過程が芳一の全身に書かれた経文であり、「 あー。寒いなー。もう室内はいいか・・・。途中で止めよっかな? 」 が書き忘れた耳にあたるという、なんだかよくわからない極私的な思考過程を経て、耳なし芳一の事を妄想していたのだと思われる。
で、洗車はどーなったのか?というと・・・外装をカーシャンプーで洗ったところで満足してしまい、やはりわたしも耳を書き忘れた口なのであーる。